時代小説『戦場の桜』その11
弥一はまっしぐらに仁三郎のもとに駆け寄せると、大上段に振りかぶった木の棒を二度三度と仁三郎目掛けて思い切り振り下ろした。
仁三郎はその棒をはっしと受け止め、二合三合と切り結んでいたが、体についた松ヤニのせいか、いつものキレがなく、段々押され気味になってきた。
「いつもなら、弥一なんかウヒョのヒョなのに…。」
伊蔵も周りを数人に囲まれ、いつもの爆発的な田舎者パワーが鳴りをひそめている。
仁三郎が伊蔵を気にして、ふと見た瞬間、隙が生じた。
弥一の棒が仁三郎の左肩をポーンと突いた。
思わずよろめいた仁三郎は、愛馬もろとも、どうと倒れ込んだ。
なおも馬上から執拗に仁三郎を狙う弥一の棒を、右手一本で防ぎながら、負けを覚悟していた。
その時、太トゥトゥトゥという鼓の音が…。
「クソッ、もう少しで仁三郎を倒せるところなのに。まぁ後でも倒せるわ、貴様の命は一旦預けておく。 よーし、全軍一旦戻れー。」
と弥一が言うと、よーく訓練された軍隊ように、さぁーっと軍勢が陣に戻り、丸太がまたピチッと閉められた。
「仁三郎、大丈夫ずらか?」
「ああ、ちょっと油断した。冷やせばすぐ治る。今、手拭いを濡らしてきてもらった。
それよりも、あの陣を見てみろ。おれたちを本陣に戻さないつもりじゃねえか?そうなると、国松の側には眞之介しかいないぞ。
あいつ、普段は全くのヘタレだからなぁ…。
伊蔵、何とかして弥一の陣を抜くぞ。時間がかかればかかるほど、国松が危ない。
まぁあいつなら、何とかするんだろうがウヒョヒョ。」
つづく
さぁこれで、勝負の鍵は眞之介に委ねられた。のか?
眞之介が、腰を痛めてジョギングできない状態ではまずいだろ。そりゃ作者か(((・・;)
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